「その光景は、まるで『光』が『音』になったようでした。」
これが、タイのクローン・トイ・スラムで初めて彼らの演奏を聴いた時の、偽らざる感想です。
世界で最も過酷な環境の一つで育った子どもたちが、なぜ、こんなにも美しく、力強いハーモニーを奏でられるのか?
前回の記事で紹介した、高知から世界へと繋がるパネルディスカッション『世界の子ども達』。その主役となるタイ側のイマヌエル・オーケストラについて、彼らの活動の核心と、若者が熱狂する理由を深掘りします。
🔥第1章:麻薬と犯罪の誘惑を断ち切る「音の盾」
「生まれる場所は選べない。でも、進む道は自分で決められる」
タイの首都バンコクに位置するクローン・トイは、およそ10万人の貧困層が暮らす、タイ最大のスラム街です。そこには深刻な貧困、差別、そして麻薬や犯罪といった問題が、子どもの日常として存在します。
イマヌエル・オーケストラは、まさにこの場所で誕生しました。
- 始まり: 2000年頃、一人のノルウェー人女性宣教師が、通りで遊ぶ子どもたちにバイオリンを無償で教え始めたのがきっかけ。 
- 目的: 音楽教育の最大の目的は、子どもたちを麻薬や犯罪の誘惑から遠ざけること。毎日、楽器を練習する時間を作ることで、彼らは安全な場所で放課後を過ごせるようになりました。 
- 現状: 今や小学生から高校生まで約80名が通うスクールに成長。地道な活動が広がりを見せ、子どもたちの人生そのものを変えてきました。 
このオーケストラは、単なる音楽教室ではない。子どもたちにとって、それは「生きる場所」であり「未来への生命線」なのです。
🚀第2章:音楽が与える「果てしない可能性」という名の翼
「スラム出身だから」ではない。「音楽家だから」と胸を張る自信
トンさん(オーケストラ関係者)が強く願う最大の目標は、子どもたちに「スラム街だけではない広い世界があり、果てしない可能性がある」と教えることです。
彼らは音楽を通して、以下の3つの大きな変化を遂げました。
- 自己肯定感の獲得: 練習を重ね、一つの曲を完成させる喜びは、困難な環境で育った子どもたちに大きな自信を与えます。「自分にもできる」という成功体験が、彼らを内側から輝かせます。 
- 差別意識の克服: 楽器を持ってステージに立てば、彼らはもう「スラム出身の子ども」ではありません。彼らは「観客を感動させる音楽家」です。彼らの演奏活動が認められ、支援の輪が広がることで、人々がスラムに対するイメージを変える奇跡が起きています。 
- 世界との繋がり: 実際に日本への遠征公演も実現し、各地の子どもたちと交流を行ってきました。貧富の差を超え、言葉の壁を超え、彼らはその自信に満ち溢れた姿で、多くの人に希望の光を届けているのです。 
✨第3章:高知との対話が示す、若者の「志」のリアル
「好奇心」。これが、未来を変えるたった一つのキーワード
高知市立第四小学校の「りょうまプレート」と、クローン・トイの「イマヌエル・オーケストラ」。一見遠く離れたこの二つの点が高知の地で交差する時、強烈な化学反応が生まれます。
パネルディスカッションで生まれるのは、単なる文化交流ではありません。それは、「志」のバトルのような真剣な対話です。
- 高知の子どもたち: 龍馬の教えを受け継ぎ、恵まれた環境で「未来の日本に役立つ」という高い志を育む。 
- タイの子どもたち: 生きるために戦い、音楽という武器で「自分の運命とスラムのイメージを変える」という熱い志を持つ。 
高知の子どもたちは、彼らから「生きる情熱」と「困難に立ち向かう勇気」を学びます。そしてタイの子どもたちは、彼らから「安定した環境で夢を追える世界の広さ」と「希望」を受け取ります。
『好奇心』。これが、高知とタイの子どもたちが互いの人生を学び、未来を創造する、たった一つのキーワードです。彼らの正直な対話は、「世界は広くて、自分の行動次第で何でもできる」という、最もシンプルで熱いメッセージを、日本の若者に突きつけます。
イマヌエルオーケストラ来日公演2025|シャイン・フォー・ユー
イマヌエルオーケストラの詳細に関しては、現地支援団体である特定非営利活動法人シャイン・フォー・ユーの公式サイトをご覧ください。
 
  
  
  
  
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